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「荒巻義雄の世界」展報告書

1 はじめに


 2014年2月8日から3月23日まで、札幌・中島公園内の北海道立文学館で開催された「荒巻義雄の世界」展は、さまざまの意味で異色の文学展となった。

 まず、現役のSF作家の文学展が開催されることそのものが、異例の出来事だった。
 SF作家の文学展が「文学館」で開催された例は、2010年に東京・世田谷文学館で開かれた「星新一展」など、全国でもこれまで数えるほどしかない。北海道立文学館で開催された作家個人の文学展も、これまでは純文学系の作家がほとんどで、SF作家の文学展が開催されるのはもちろん初めてだった。

 さらに、展覧会の開催形式も、異例だった。
 これまで、北海道立文学館の企画文学展は、同館が主体となって企画、開催していたが、本展は荒巻をよく知るさまざまの分野の専門家が、民間側の実行委員会を結成して展覧会の企画・構成に最初からかかわり、同館とのコラボレーションによって開催にこぎつけた。
 同館が民間の有志と共同で文学展を開催するのは、本展が初めてだった。

 「荒巻義雄の世界」展が実現するきっかけになったのは、札幌在住の建築家松橋常世が描いた1枚の図面だった。1983年、大河SFロマン「ビッグ・ウォーズ」シリーズを執筆していた荒巻から依頼を受けた松橋が手書きで描いた、同シリーズに登場する都市型宇宙船「ニュー・ユートピア・シティー」(NUC)の設計図である。
 それから30年近く後、この設計図を基に、札幌在住のCGデザイナー中野正一が、NUCが地球を飛び立ち、宇宙空間を航行していくさまざまのシーンをCGアートに描いた。
 この設計図とCGアートを核として、荒巻と親しい人々の間で「荒巻義雄の世界」展の構想が生まれ、北海道立文学館の理解を得て、開催決定に至ったのである。

 対象となった作家や開催の形式だけでなく、展覧会そのものも、作家の著作、日用品、写真、年譜といった従来の展示にとどまらず、ビデオ、CGアート、音声などを駆使して、これまでの文学展の常識を打ち破るものとなった。

 さらに、会期中に同館で、荒巻による講演会、パネル・ディスカッション、対談、ギャラリー・ツアーを実施したほか、札幌市内の小学生たちの作品を集めた絵画展を開催した。

 また、展覧会の周知を図るため、ホームページ「荒巻義雄のNEW UTOPIA CITY」と、実行委員会のフェイスブックを開設。前年の2013年、札幌市内でプレイベントとして松橋と中野の2人展、荒巻のトークショーを開催したほか、会期中には札幌のギャラリー「鴨々堂」で、実行委員全員が、それぞれトークショー、コンサートなどさまざまの関連イベントを開いた。

 展覧会は、会期中に1605人の入場者を集めて閉幕した。積雪など厳しい気候条件に加えて、ソチ五輪と重なるなどの悪条件にもかかわらず、入場者数は、これまでに同館で開催された作家の文学展の平均をかなり上回った。

 この報告書は、おそらく文学展としては画期的ともいえる「荒巻義雄の世界」展の全容を、分かりやすい形で伝えるためにまとめられた。
 この報告書により、本展にかかわった実行委員たちの思いが、荒巻義雄という作家の読者、そしてこれから読者になるかもしれない人たちに幾許かでも伝われば、望外の幸せである。

「荒巻義雄の世界」展実行委員会

〈実行委員・事務局長〉

 瀬戸正昭 詩人。詩誌『饗宴』主宰。株式会社朝日アグリ代表取締役
      =総括・企画・渉外・事務局担当

〈実行委員・事務局次長〉

 松橋常世 建築家。松橋常世建築設計室代表=企画・設営・イベント担当
 中野正一 CGデザイナー。有限会社バイ・プレーン代表取締役
      =企画・CG・デザイン・図録・ホームページ担当

〈実行委員〉

 石川圭子 1級古民家鑑定士。ギャラリー「鴨々堂」オーナー
      =設営・イベント・フェイスブック担当
 木下泰男 建築家。地域建築道東圏+J.Ma.ジュジョール建築思潮研究アトリエ主宰
      =設計・設営担当
 中井孝二 プロダクト・デザイナー。フォームデザインスタジオ代表=設計・設営担当
 平尾稔幸 建築家。平尾建築事務所代表=設計・設営担当
 三浦祐嗣 SF研究家。元北海道新聞文化部長=イベント・広報・報告書担当

〈特別委員〉

 佐藤 武 画家

〈主要協力者〉

 横谷恵二 パノラマ写真家。パノラデザイン株式会社代表取締役=映像担当
 相山隼也 松橋常世建築設計室スタッフ=設計担当

※この報告書は、担当実行委員の三浦が編集した。署名のある記事を除くすべての記事は三浦が執筆している。パネル・ディスカッション、対談などでの発言を除き、文中では原則として敬称を略した。


2「荒巻義雄の世界」展 概要

「荒巻義雄の世界」展報告書

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